競売という制度は、銀行等の債権者から、不動産を担保に入れてお金を借りた債務者(物件所有者等)が、借入金を返済しないときに、これらの債権者が裁判所に申立てて、裁判所の手で強制的に不動産を売却してもらい、貸付けたお金の回収を図るものです。
債権者にとっては、債務者と一切接触する必要は無く、法律の定めに従って、粛々と回収作業が完了できるという利点があります。
競売の手続きは、債権者からの裁判所に対する競売の申立から始まります。
債権者から競売の申立があると、裁判所から執行官や裁判所に委嘱された不動産鑑定士が現地に出向き、物件の現況を詳しく調査し、評価を行います。そして競売の価格を決定し、入札の期日が決り、競売が実施されることとなります。買受人の決定は、定められた期間内に入札に応じた人の内の最高金額の入札者に決定されます。決定した買受人は、定められた期間内に競落代金を裁判所に納付し、裁判所はこれを受けて、不動産に設定されている全ての抵当権等の抹消登記や、買受人への所有権移転登記を行い、競売は完了します。
(1)引越しの時期についての交渉ができない
競売の手続きは全て裁判所の手で行なわれる為、債務者が引越しの時期を裁判所と交渉して延ばすというわけには行きません。
入札が終わり買受人の代金納付が行なわれると退居しなければなりません。
退去を拒めば強制執行により退去させられることとなります。
(2)引越し代を請求する権利がない
競売で売却された場合、債務者は買受人に対し引越代を請求する権利はありません。
交渉により買受人が用意してくれる場合もありますが、基本的には引越代は出してもらえない、と考えておいた方が良いでしょう。
(3)売却後に残った借入金の返済についての交渉の接点がない
競売による売却の場合、手続きの全てが裁判所の手で行われるため、債務者は債権者との間に直接交渉を持つ接点が無く、残債についての交渉の環境が構築しにくい傾向にあります。
(4)自宅が競売に付されている事実が近隣に知られる
自宅が競売に付されている事実が近隣に知られることは多いようです。
競売の申立が為されると、裁判所は比較的早い時期に「配当要求終期の公告」という手続きを通じて、競売の申立のあった事実を公表しています。
この情報を定期刊行物やインターネットで配信している業者があり、この情報を購入して近隣にチラシ等により広告を行い、競売の入札の代行業務を受託しようとしたり、購入希望者を探しておいて自ら競落して、転売しようとする業者は多いようです。
競売に出された場合、債務者(物件の所有者)が負担しなければならない費用はあるか
競売の費用は全て競売を申立てた債権者が負担します。
債権者は申立時点でこの費用の概算額を予め裁判所に預納金として納付しなければなりません。従って債務者には原則として費用負担は発生しません。
(債権者には競落後、不動産の競落代金の中から清算されます。)
競売で売却された場合、いつまでその物件に住んでいられるか
競落人が競落代金を裁判所に納付するまでは居住が可能です。
その後も居住し続けると、強制執行により退居させられることになります。
競売の場合、入札を希望する人は、事前に建物の中を見ることは極めて困難です。
民事執行法で定める内覧制度によらなければ、建物の中を見られるのは、原則として落札して代金納付を完了し、そして居住者が退去した後になります。
入札を希望する人は入札時点では建物の詳しい状況が分からずに買い受けの意思表示(入札)を行なわなければならず、その他にもさまざまな制約があります。
裁判所はこれらの危険負担を勘案して、一般の相場の70%程度を目安に競売の価格を算定します。
従って、競売の価格は任意売却の価格より安く設定されることとなります。